第27章 翔ぶ
……あぁ、そうだ。
故郷の丘で私を救ってくれた、私に自由を教えてくれた、あの金髪の調査兵。
“お嬢ちゃん、君は自由なんだ。あの鳶のように”
今も彼の声が聞こえてくる。
……そうだわ。私は自由なんだ。
“そう、自由だ。君は君であり、自由なんだよ。あの鳶が自由に空を飛ぶようにね。そして君をからかった子も、もちろん自由だ。ひとりひとりが、かけがえのない自由な存在であるからこそ尊いんだよ。そしてそれは、君が君のままでいるからこその自由なんだ”
「私が私のままでいること…」
マヤのつぶやきに、リヴァイが応じる。
「そうだ。王都でマヤはマヤのままでいられるのか? 自由でいられるのか…?」
「わかりません…」
「行く前からそんな泣きべそをかいているやつが自由なもんか」
樫の木の下からリヴァイは、まっすぐにマヤを見つめる。
「王都に行くのはよせ。レイモンド卿と結婚するな。お前が自由でいられるのは…、お前の居場所は調査兵団だろ?」
「……兵長…」
マヤの瞳は揺れている。
「調査兵団で自由に生きろ」
リヴァイの瞳も揺れている。
そしてマヤには聞き取れないほどの声でつぶやいた。
「……いや違う…。建前を使うのはよせ…」
「……え? なんですか?」
聞き取れなかったマヤが身を乗り出した。
「いいかマヤ、よく聞け。今俺が言ったことは半分は本音だが、半分は建前だ…」
「……え!?」
「調査兵団が居場所だとか自由に生きろとか…、そうじゃねぇ。俺が…、俺がお前を王都に行かせたくねぇんだ。あいつと結婚なんかするな!」
「……兵長?」
何が起こっているのだろう。
マヤは突然の心情の吐露に驚いて、目を見開いて真下のリヴァイを見つめた。
「マヤ、お前の居場所は俺の隣だ。命に代えてもお前を守る」