第27章 翔ぶ
………。
似たような質問をハンジから以前にされた気がする。
確かレイモンド卿が突然ここに現れて、訓練の見学とマヤを街に連れ出したいと言ってきたときだ。あのときもハンジは “本当にこれでいいのかい?” と詰め寄ってきやがった。
あのときも今も、俺の答えは変わらねぇ。
「いいも何も…、マヤが決めることだろうが」
「そうだよ、マヤ次第だ。それは私だってわかってる。前は引き下がったけれど、今日はとことん言わせてもらうつもりだ」
……何が言わせてもらう…、だ。
こいつを黙らせろとエルヴィンの方を見るが、涼しい顔をしていやがる。
「最終的にはマヤが決めることには間違いない。そこは異論はないさ。けどね、マヤが決断に至るまでに色んな要素が関係してくるだろう? そこにリヴァイの意見をぶちこまなくていいのかい?」
「………」
「リヴァイがこのまま何も言わなければマヤは意に染まぬ結婚でもなんでもする…、それが調査兵団のプラスになると判断すれば。そういう子なんだよ。憶えているかい? 壁外調査で巨人にやられたとき、リヴァイの部屋で目覚めたマヤは私にこう言ったんだ。“人類の勝利には巨人の捕獲が必要だったのに…、そのためなら私の命なんて” と。命ですら兵団のために、ひいては人類のために差し出す覚悟でいるんだ。貴族との結婚で人類の自由のために戦えなくなっても、自身の自由がなくなっても、それが兵団のためならばマヤはどんなことでもするはずだ。そうだろ?」
「………」
……そうだろうな、そうかもしれない、いやきっとそうだ。
そんなことはハンジに言われなくてもわかっている。
……だが俺に一体何ができるっていうんだ。
黙っている俺に業を煮やしたハンジは、エルヴィンに矛先を転じた。
「エルヴィンからも何か言ってくれないか。このまま明日を迎えたら、マヤが結婚してしまう!」