第27章 翔ぶ
………!
それは今、心いっぱいに占めているリヴァイの声。
……やだ、いくら逢いたいからって空耳が聞こえるなんて…、どうかしているわ…。
マヤが自身の心の弱さのせいで聞こえてきた空耳だと思っていると、もう一度聞こえてきた。
「おい、マヤ」
……えっ?
空耳じゃない…?
確かに耳に届いた声は、気のせいなんかではない。
ハッと反射的にマヤは木の下を見た。
「……兵長…?」
まっすぐに見上げてくるリヴァイの視線に射抜かれる。
「……どうしてここに…?」
リヴァイへの想いを封印してレイのプロポーズを受けると決めたのに。この丘で想い出にひたれば涙が止まらなくなってしまった。
涙を流して自身の恋心も一緒に流してしまおうとしていたのに。
その恋慕の相手が現れるなんて。
信じられない想いで、つぶやくように訊いたならば。
「………」
リヴァイはすぐには答えずに黙っている。
その青灰色の瞳には不思議なことに、焦燥感と安堵感という相対する感情が同時に存在しているように見えた。
……どうしてここに、だと?
リヴァイは木の上のマヤを穴のあくほど見つめては訊かれたことを考えて、そして自身の行動を思い返した。
それは執務室でのこと。時刻は午後の訓練の第二部が始まってすぐ。
どこか困ったような、緊張したような妙な顔をしたモブリットが伝えてきた。
「兵長、団長がお呼びです」
……ただの伝達ならば、こんな顔はしねぇ。クソッ、何かあるな。
モブリットが呼びに来たということは、どうせクソメガネが関係しているに違いねぇ。
考えただけで気が重くなる。
これがハンジの執務室に来いという話なら無視するところだが、団長室とはな…。
忌々しいクソメガネめ!
用があるなら、てめぇが来やがれってんだ。
団長室の扉を蹴飛ばしたい気分で渋々顔を出せば、案の定ハンジの野郎が待ち構えていた。
「やぁリヴァイ、来たね!」