第13章 さやかな月の夜に
マヤが一人で食堂に行くと、ペトラとオルオがなぜか横並びで座っていた。
カウンターで夕食を受け取り、まっすぐ二人のところへ。
「マヤ!」
ペトラの明るい声に歓迎されながら、彼女の真向かいに腰をかけた。
「お疲れ」
オルオも笑顔を向ける。
「お疲れ様。……ねぇ、どうして並んで座ってるの?」
マヤが真っ先に質問すると、ペトラがマヤの座った場所をあごでしゃくった。
「さっきまでそこに兵長がいたのよ」
そして嫌そうに顔をしかめて、つけ加えた。
「それなのにすぐに帰っちゃったから、コイツと二人になった上にこんな真横に座られてさ!」
「それは、こっちのセリフだけどな!」
兵長と聞いて少々ドキッとしたが、マヤはおくびにも出さずに微笑んだ。
「相変わらず、仲の良いことで」
「「はぁ!?」」
「ふふ」
息がぴったりの二人の反応に、マヤは思わず笑みがこぼれた。
マヤが “いただきます” と手を合わせ硬いパンを千切って口に運んでいると、ペトラが切り出した。
「マヤ…」
「ん?」
「マヤのアドバイスどおりにオルオの馬鹿相手に鬱憤を晴らしてたら、いつの間にか一日が終わってる」
そして、とびっきりの笑顔でつけ加えた。
「もう、全然大丈夫だから!」
マヤはペトラがオルオに噛みついている様子が目に浮かび微笑ましく思うのと同時に、オルオにごめんと内心で詫びた。
でももしかしたらオルオはペトラに絡まれて喜んでいるかもね… とも思い、オルオの方を見やると彼は複雑な表情をしていた。
「なぁ、その馬鹿相手にっての、他に言い方ないのかよ!」
「だって馬鹿は馬鹿じゃない。他に言い方なんてある訳ないでしょ!」
マヤは、笑いながら二人を取り成す。
「まぁまぁ、そんな楽しそうにしないで」
「「楽しくない!」」
目の前で繰り広げられる夫婦漫才の掛け合いに、マヤは心から良かったと思った。
……オルオ、ありがとう。
ペトラが、こんなに楽しそうに笑っている。
オルオのおかげだ。
マヤが感謝の思いでオルオを見ると、思いきり目が合ってしまった。
何かを訴えるような強い視線に、マヤはたじろいだ。
「な、何?」