第27章 翔ぶ
「今日は早いんだね!」
「うん、レストランは行ってないから」
「そうなんだ。じゃあ一緒にごはん食べよ? まだだよね?」
「まだだけど…、食欲がなくて…」
そのときになって初めて、ペトラはマヤの顔色が良くないことに気づいた。
「どうしたの! なんかあった?」
「レイさんにプロポーズされた」
「えっ!? 」
驚きの声を上げたペトラだったが、すぐにてきぱきと指示してくる。
「やっぱりごはんを抜くのは駄目だよ。だから一緒に食堂に行こう。そこで詳しく聞かせて」
「わかったわ…」
確かに食事を抜くことは良くない。兵士は体が資本なのだ。
だから食堂に行くことには同意したものの…。
「ごはんは食べるわ…。でも話は部屋に帰ってから。誰にも聞かれたくないの」
「了解!」
マヤの顔色と様子から事態の深刻さを悟ったペトラは、即時行動に移る。
「じゃあもう行くよ! さっさと食べて、そのままお風呂も済ませちゃおう! お風呂の準備をして、ここに集合!」
バタン! と慌ただしくペトラの部屋の扉が閉まる。
その勢いに圧倒されたが、今は立ち止まると考えこんでしまうから、このくらいのせわしなさが逆に心地良い。
マヤはくすっと笑うと一旦部屋に戻って、食堂と大浴場に行く準備をした。
……薔薇の花は、あとでいいか…。
ちらりと花束に目をやってから、部屋を出る。
ペトラはもう待っていた。
「よし、行こう!」
数歩行って立ち止まって、ペトラはニッと笑った。
「大丈夫、部屋に帰ってくるまではレイさんのことは一切口にしないから安心して」
「うん、ありがとう」
マヤも笑い返した。
そうやって連れ立って行った食堂で、二人は目立たない隅の席に座った。
メニューはチキンソテーとサラダ、スープ、いつものパン。
「結構ご馳走だね、今日は」
上機嫌でチキンを口に放りこむペトラを見ながら、マヤは両手を合わせた。
「いただきます」
やはり食欲はないが、目の前で美味しそうにぱくぱくと食べる友の姿を見ていると、自分も食べられそうな気になってくる。
ペトラ効果で思いがけず食が進み、半分以上食べたところで。
「マヤ~! ペトラ~!」
二人の席に突進してきたのはハンジだった。