第27章 翔ぶ
バンッと大きな音を立てて夕食のトレイを置くと、ペトラの隣に腰をかける。
「分隊長、久しぶりのマヤだからって猪突猛進しすぎです…!」
遅れてモブリットが、マヤの横の席へ。
「マヤ、ペトラ、失礼するよ」
「「お疲れ様です」」
ハンジとモブリットに頭を下げる二人に対してハンジは鼻息荒く、一気にまくし立てた。
「いや~! マヤ、ホント久しぶりだね! レイモンド卿が押しかけてきてから一週間くらいは経ったかな? マヤと会う機会がすっかりなくなっちゃって淋しかったのなんのって。それにペトラもだね? ペトラもよく考えたら久々に見る。なぜだろうか? なぜだい? 二人ともちゃんとごはんを食べに来てたかい?」
「ハンジさん、私は普通に毎日食堂に顔を出してましたし、マヤも朝と昼は来てたよね?」
ペトラの言葉に同意するマヤ。
「うん、来てた。でも… そう言われたら確かに、ハンジさんやモブリットさんと一回も会わなかったわ。どうしてかしら?」
「だね、私もハンジさんたちと会ってないわ」
「だろ! おかしいなぁ!」
女三人で “なぜこの一週間、食堂で会わなかったのか” と首をかしげていると、モブリットが答えを出した。
「それは… 我々が食堂にほとんど来なかった、あるいは来たときは遅れたからですよ、分隊長」
「え? そうだっけ?」
とぼけ顔のハンジに、あきれ顔のモブリット。
「そうですよ。ほら、貴族に売りつける新薬の、今までとは全く違った画期的な配合を思いついたからと、研究室に連日こもりっきりのほぼ徹夜だったじゃないですか。まさか忘れてはいないでしょうね?」
「あぁ! もちろんそれは忘れる訳ないじゃないか! そうか、それで食堂には来ていなかったのか。食堂に来ていなかったことをすっかり忘れていたよ!」
大きな口を開けて豪快に笑うハンジ。
「まったく…。巨人や薬の研究以外のことには全然かまわない人なんだから…」
大きなため息をつくモブリット。