第27章 翔ぶ
せっかく兵長に逢えたのに。
一緒に紅茶を飲んで、楽しく話ができるんだと嬉しかったのに。
もしかしたら自分のせいで兵長の機嫌が悪いのかもしれないと思うと悲しくなってきた。
ふと気になってマヤがミケの方を見てみると、ミケも厳しい顔をしている。
……分隊長にも嫌な思いをさせたのかしら…。
マヤは、ミケがマヤのためを思ってリヴァイに腹を立てていることなど知りもしないので、ミケの苛立っている顔も自分のせいではないかと考えてしまった。
「……あの、すみませんでした。私、面白くもない話をべらべらと調子に乗って…。兵長も分隊長も気分が悪いですよね…、酒豪とか勝手に噂されたりして…」
マヤが謝った途端に、ミケが反論した。
「いや、それは違うぞマヤ。俺は少なくとも全然気を悪くなんかしていない」
「……そうですか?」
「あぁ、俺はリヴァイには言いたいことがあるがな」
ミケはより一層険しい顔をして、リヴァイに声を荒らげた。
「さっきからなんなんだ、お前は。不機嫌なまま黙りこむなら、ここに来るな」
かちゃりとリヴァイはティーカップを置いた。
「……わかった」
そう言うなり立ち上がるとマヤを見下ろす。リヴァイを目で追っていたマヤは、この日初めてばっちりと目が合った。
「マヤ、別に謝る必要なんかねぇ。もしお前にそう思わせたなら、それは俺のせいだ」
「………」
マヤはリヴァイが何を言いたいのかよく理解できなかったし、どう返事をすれば皆目わからなくて、ただリヴァイの顔を黙って見つめ返すしかできなかった。
呆気にとられているミケとマヤを置いて部屋を出ていこうと数歩行きかけたが、リヴァイは立ち止まって振り向きもせず告げた。
「それから… しばらく執務の手伝いに来なくていい」
「……え?」
マヤは何がなんだかわからず言葉に詰まる。
リヴァイは歩き出し、もう扉に手をかけているが、さすがに今回は黙っている訳にはいかない。
「待ってください! どうしてですか? 私…、やはり何かしましたか?」
「いや…。今は別に手伝いは必要ねぇから…、それだけだ」
「………」
ばたん。
扉が閉まる。
何も言えないマヤを残して、リヴァイは出ていった。