第27章 翔ぶ
「違うも何も、そんなあだ名をつけられているとはな。知っていたか、リヴァイ?」
ミケに話を振られて、じろりと一瞥してからリヴァイは渋々といった様子で答えた。
「あぁ、聞いたことはある」
「そうなんですね! じゃあやっぱり兵長や分隊長は “酒豪四天王“ で合ってるんだ」
ミケに聞き捨てならないと言われて、もしかすると “酒豪四天王“ は事実ではないのかと焦ったマヤは、リヴァイの肯定を示す言葉に安心する。
「妙なあだ名はともかく、俺やリヴァイが酒好きだってことは間違いない」
「なるほど。お酒に強い人は、お酒を好きな人なのですね」
「そうだ、好きでもないと飲んでられないさ。なぁリヴァイ?」
またミケはリヴァイに話を振るが、今度はミケまでも無視をする。
……やっぱりリヴァイの様子が変だ。
一体なんなんだ?
いつもどおりに休憩にやってきたかと思ったのに、マヤの話に乗ってこない。俺の呼びかけすら反応しない。
黙って紅茶を飲むだけなら、自分の執務室で一人で飲めばいいじゃないか。
いい加減腹も立ってきて、ミケはひとことリヴァイに言ってやろうとした。
“おいリヴァイ。何を不機嫌そうに黙っているんだ。そんな態度なら出ていけ” と。
口をひらきかけたそのとき、マヤが先にリヴァイに。
「……あの兵長。なんだか気分が悪そうですけど、もしかして二日酔いですか?」
マヤは素直に、リヴァイがいつもと違って話しかけても返事をしてくれないのは、体調不良が原因なのではないかと考えたのだ。
「いや、そんなんじゃねぇ」
さすがに体の具合を心配する問いには反応した。
「そうならいいんですけど…」
二日酔いではないと答えてはもらったが、マヤの心配する気持ちは逆にふくらんできた。
……なんだか兵長、怒っているみたい…。
休憩しに来てくれたことで “避けられている?” と感じていた疑問が吹き飛んだはずだったが、またむくむくと頭をもたげてきた。
……もしかしたら私がくだらない話をしたから、余計に気分が悪くなっちゃったのかな?