第12章 心づく
そのまなじりの鋭さにエルドが何も言えないでいると “お待たせしました!” と、料理が運ばれてきた。
湯気を上げる肉や野菜の蒸し物に、なかなか兵舎では口にできない生野菜のサラダにチーズ。大きな鶏の丸焼きまで香ばしい匂いを漂わせている。
皆はまず運ばれてきたエールを手にし、乾杯した。
「お疲れ様」「お疲れ様っす!」「お疲れー!」「乾杯!」
威勢よくグラスを合わす音につづき、ゴクゴクゴクゴク、プハー! 美味ぇ! と、リヴァイ班のテーブルはにぎやかだ。
「このチーズ、最高!」
ペトラが叫ぶかたわらで、オルオは鶏の丸焼きにかぶりついている。
「ちょっと! ちゃんと切り分けなさいよ!」
「あははは、仲の良いこった!」
いがみ合う二人を肴にグンタはどんどん杯を重ねる。
ご馳走は主にオルオとペトラの活躍でみるみるうちに減り、リヴァイは黙って手を上げ肉と酒を追加した。
リヴァイは食事にはほとんど手をつけず、黙って酒を飲んでいる。
その様子がいつもどおりだったので、エルドは先ほど覚えた違和感は気のせいだったのかと安堵した。
そのとき、藪から棒にリヴァイが立ち上がった。
見上げるエルドと視線が絡むと、ぼそっとひとこと残した。
「あとは頼む」
「はい」
エルドの視線を背にしながら、リヴァイはミケの隣に腰かけた。
エルドがテーブルに目をやると、相変わらずオルオとペトラは唾を飛ばしながら肉を奪い合っている上に結構なペースで酒も口にしているし、グンタはニヤニヤしながら一人静かに杯を傾けている。
エルドはグラスを手にして、グンタの隣に座ると一緒に飲み始めた。