第27章 翔ぶ
「それもそうだね。兵団の敷地に咲けば毎日見られるし、その方がいいかも!」
ラドクリフ分隊長にお願いするというアイディアに目を輝かせるマヤ。
「いい考えだね、ペトラ。花といえば分隊長なのに、今は全然思い浮かばなかったわ」
「マヤ、あんなに分隊長と仲がいいのにね。私はね、花だから思い出したんじゃなくて、アトラスさんと分隊長が似てると前から思っててさ~、それでだよ」
「あぁぁ! 顔がまん丸なところとか、確かにね!」
「でしょう~、体形も結構似てるよ」
「うんうん」
貴族と調査兵の巨体の二人を思い浮かべて、しばし盛り上がった。
「あっ、そうだ」
薔薇にちなんだもうひとつの話を思い出すマヤ。
「さっきペトラが休ませてもらっていたお部屋ね、レイさんやセバスチャンさんが “ファビュラス” と呼んでいたでしょう?」
「あぁぁ…、なんかそんな言いにくい変な名前だったね。あれ、どういうこと?」
「“ファビュラス” は白薔薇の名前なんだって。でね、お屋敷の装飾品とか備品とか白薔薇で揃えてるじゃない? だからお部屋も白薔薇の名前で呼ぶらしいよ」
マヤの説明にペトラは、少し口の端をへの字に曲げた。
「ふぅん…。部屋まで白薔薇の名前をつけるなんて、ちょっとやりすぎじゃない?」
「まぁそうかもしれないけど、これだけ広大なお屋敷でしょう? だから部屋数もものすごくて実用上名前があったほうが便利だからみたいだよ?」
「そうかな?」
「うん、多分。たとえば “一階の七番のお部屋” より “一階のファビュラスのお部屋” の方がパッと一瞬で、あのお部屋だ!ってわかっていいんじゃないかな?」
マヤの口にしたたとえを頭の中で考えて、ペトラは渋々うなずいた。
「……そうかもね、言われてみれば」