第27章 翔ぶ
「それは… 答えに困っただろうね」
「うん…。もう心臓がバクバクして、きっと顔だって赤くなっていたんじゃないかな…。とにかく兵長を好きなことが、レイさんにばれちゃいけないと思って必死だったよ。最初はうまく返せる気がしなかったんだけどね…。だって兵長のことを好きな気持ちは消せないし、ごまかすのが難しいと思ったの。でも “兵長は上司だからそんな風に見る訳がない” って言ってみたら、なんか自分の中でもこれ以上納得できる理由はない! と思えちゃって。あとはもう胸を張って答えられたよ “兵長は上司ですから!” ってね」
「そうだね、それでいいと思う。レイさんは、あんまりうちらのことを知らないんだから、上司の兵長を恋愛対象として見ていないというのは最強のちゃんとした理由だよ!」
ペトラも大いに同調してくれた。
マヤはやっぱりあのように答えて正解だったと安心する。
……だからその後レイさんも納得してくれて、あれ… どうなったんだっけ?
確か私が兵長のことを上司以上でも以下でもないとキッパリと言いきったら “そうか、わかった” とうなずいてくれて…。
あれ?
それから、どうなった?
なんか会話が途切れちゃったような。
そうだわ、眠っていたアレキサンドラが急に鳴いて走り出したのよ、ネズミか何かがいて。
……だから話がそこで終わったんだった。
マヤが回想していると、ペトラの声が聞こえてきた。
「でも、あれだね。普通だったら上司で、ひとまわりくらいも年上の人なんか恋愛対象じゃないっていうのは立派な否定理由になるけどさ、実際は兵長は調査兵団では団長とならんでモテまくってる訳だし? 本当は全然理由になってないんだけどね。レイさんが “兵長派” “団長派” を知らなくて助かったね」
そのとおりだと思ってペトラの顔を見上げると、にんまりと笑っている。