第27章 翔ぶ
鼻息荒くオルオを邪魔者扱いして、なぜか得意そうなペトラの目は爛々と輝いている。
その勢いに圧倒されて、マヤはたじたじだ。
「そうなんだ…」
レイさんに求婚されたことは、いずれペトラに相談したいとは思っていた。
……でもデートの誘いとは違って、いきなりの “結婚してくれ” だし、簡単にぺらぺらと話しちゃってもいいのかな… という葛藤もあって。
けれどペトラがすでにレイさんの気持ちを知っているという事情ならば、話は違ってくるわ。迷うことなく相談できる。
「確かにペトラには聞いてもらいたいことがあるの。でも今はちょっと…」
「なんで?」
「だって… いつオルオが兵長を連れて帰ってくるかわからないし。落ち着いて話ができないよ…」
「あぁぁ、それはそうだね。そうなると…」
ペトラは扉をキッと睨んだ。
「オルオのやつ、何やってるんだろ。早く帰ってくればいいのに!」
追い出したり、早く戻れと言ったり… 忙しい。
「オルオが帰ってきたら、私たちはもう寝るって言って部屋に通してもらおう。それでどっちかの部屋でゆっくりと…!」
「うん、それがいいね」
マヤはペトラの計画に乗った。
リヴァイ兵長を捜しに “ファビュラス” を出たオルオは広間に来ていた。
「廊下にはいねぇし、もう広間しか捜すとこなくね?」
ぶつくさと独り言を連れて見渡せば、バルコニー貴賓席にいるリヴァイを見つけた。
「あれ? マヤを捜してるんじゃ…?」
少々奇妙に思ったが、深く考えることなくオルオは螺旋階段を上った。
「失礼します!」
「やぁ、オルオ君!」
バルネフェルト公爵が右手をひらひらさせた。
「戻ってきたんだね。さぁ、かけたまえ」
「はっ」
ナイルの隣に座る。
オルオはその場の雰囲気を妙だと思った。
テーブルの上には酒瓶が所狭しと並び、リヴァイ兵長はじろりとこちらに視線を投げてきただけで、何も言わない。
……なんだ、これ?
「へ、兵長… 報告します」
妙だとは思うが、とりあえずは義務を果たすことにしたのだが、場の雰囲気とナイル師団長がいることに慣れなくて緊張したオルオの声は裏返ってしまった。
「マヤが、落とした耳飾りを見つけて部屋に帰ってきました」