第27章 翔ぶ
「ちぇっ、わかったよ!」
オルオは渋々な様子で立ち上がったが、その実ペトラに頼られて嬉しくて仕方がないらしく、頬のあたりが緩んでしまっている。
「オルオ、ごめんね」
オルオの頬を目にして実際には嫌がっていない、むしろ喜んでいるとわかったマヤだったが、一応は謝っておく。本来ならば、やはりマヤが行くべきだからだ。
「いいって」
扉を開けたオルオは振り向きざまに笑顔を見せると、そのまま出ていった。
「よしっ! 邪魔者はいなくなった。マヤ、教えてもらうわよ!」
鼻息を荒くしてペトラがマヤの顔を覗きこんだ。
「んん?」
何をそう興奮しているのか理解できない。
というか、ペトラの体調はもういいのかしら?
「一体なんのこと? っていうかペトラ、気分はもういいの?」
「うん、ひと眠りしたら気分爽快! 大丈夫だよ」
確かに顔色も良いし、すっかり元気そうだ。
「だから私のことは心配しなくていいから、それより教えて!」
「治ったんだったら良かったけど…。教えてって何を…?」
「決まってるじゃん、レイさんとのこと!」
「………」
どうしてペトラが、レイさんとのあいだに何かあったことを知っているのだろう?
そのことに驚いて何も言えずにいると。
「レイさんと二人でいたんでしょ? デートにでも誘われた?」
レイがマヤを誘うのを当然のように思っているペトラ。
……どうして?
「なに黙ってるの、もったいぶらずに教えてよ」
「ちょ、ちょっと待ってペトラ。なんでそんなこと…」
「そんなことって?」
「レイさんがデートに誘うとか…」
実際にはデート以上のことを求められたのだが…。
「あぁ、それはね… ちょっと色々あって私、レイさんの気持ちを知ってるんだ」
「……レイさんの気持ち…」
「うん、レイさんがマヤを好きだってこと! だから今夜いつマヤに伝えるのかって思ってたんだけど、テラスで二人きりになったって言うじゃない? 絶対何かあったよね? だからもう、早くその話を聞きたくて。それで邪魔なオルオを追い払ったって訳よ!」