第27章 翔ぶ
広間のバルコニー貴賓席で、バルネフェルト公爵とリヴァイによる酒の勝負がおこなわれているころ。
マヤは薔薇テラスから出てレイと別れ、“ファビュラス” に帰った。
扉を軽くノックする音がしたと同時に入ってきたマヤを見て、ペトラが急いで出迎える。
「マヤ! 耳飾り、落としたんだって? 見つかったの?」
「うん」
マヤはソファに座ってから、耳飾りに関する出来事をすべて話した。
「へぇ、猫が!」
マヤの腰かけているソファの向かい側に座っているオルオが、アレキサンドラの登場に目を丸くしている。
「さすがレイさんの猫だね。宝石集めが趣味なんて納得だわ!」
ペトラも感心しきりの様子でうなずいている。
「……レイさんから借りている大切な耳飾りを落としちゃって、一時はどうなるかと焦ったけど見つかって本当に良かった…」
ほっとした顔をして耳飾りにそっとふれるマヤ。
揺れる大きなアクアマリンを目にしながらペトラも同意した。
「ほんとだね! 見つからなかったら… 私が緩めたらって言ったんだし、どうしようかと思ったわ。ところで…」
耳飾りの無事を確認したところで、ふとペトラは思い出した。
「兵長は?」
「え?」
マヤはリヴァイが自身を捜しているとは知らない。
「マヤを捜しに行ったんだけど、会わなかった?」
「うん」
「そうなんだ。じゃあ兵長に、マヤが戻ってきたことと耳飾りが見つかったことを報告しないとね…」
「そうだね。じゃあ私、行ってくる」
リヴァイ兵長が耳飾りを落とした自分を捜している…。マヤは責任を感じて立ち上がった。
「ちょっと待って! マヤ、兵長がどこにいるか知らないでしょ?」
「うん。だから捜してくる」
「そんなのいいよ。オルオ! あんたが行って!」
急に命令されて、オルオはびっくり。
「へ? なんで俺?」
「いいでしょ! どうせ暇なんだから」
ひどい理由だ。
「ちょっとペトラ、私が悪いんだから私が行くよ」
マヤが言えば、ペトラは。
「マヤにはここにいてほしいの。ねっ、オルオ… お願い!」
ペトラにお願いされれば、行かない理由がオルオにはない。