第27章 翔ぶ
ペトラの瞳にはなんの曇りもない。マヤとの友情の光で輝いている。
「……そうか」
オルオは口には出さなかったが、ペトラの気持ちがわかると思った。
……俺だってペトラが幸せなら、それでいいもんな…。
「きっとすぐに兵長が、マヤを連れて帰ってくるよね」
「あっ、うん… そうだな」
「ねぇ私さ~、さっきご馳走が追いかけてくる夢見てた!」
無邪気な笑顔。
「マジかよ、俺も!」
「え~、真似しないでよね!」
「俺が先に見てたんだよ!」
「私が先だって!」
「はぁ?」
……今はまだペトラの想いは兵長にあっても、いつかは…。
いや、いいんだ。
俺に気持ちなんかなくても。
こうやっていつまでも、二人で馬鹿やっていくことができたら…。
ペトラといつもどおりに口喧嘩をしながら、オルオは心では深く強く想うのだった。
マヤを捜しに “ファビュラス” を出たリヴァイは、一旦広間へ引き返していた。だがマヤの姿はなく、また来た廊下を戻って “ファビュラス” の前へ。
……やっぱりいねぇ…。
そもそもバルコニー貴賓席にいたときから、広間にマヤはいなかった。そしてセバスチャンに案内されて “ファビュラス” に行くまでもずっと、どこにも。
リヴァイは、まだ足を踏み入れていない廊下の奥を睨む。
……この奥に行ったのか?
理由は見当もつかねぇが…。マヤが今までいた場所で見当たらねぇ以上は、この廊下の奥に行ってみる必要があるよな…。
そうして歩いていく月明かりの廊下。
一歩すすむごとに、小さく聞こえている広間の喧騒が遠のいていく。
廊下の曲がり角まで来たが、誰もいない。何もない。
……静かだ。
この角を曲がってまでも捜すのかと、一瞬躊躇したが曲がる。
屋敷は長方形だ。
マヤが見つかるまで歩きつづけたとしても、屋敷を一周するだけだからな…。