第27章 翔ぶ
「さっきっていつよ! 私、心配だし捜してくる」
ソファから立ち上がろうとしたペトラを制したのはリヴァイ。
「俺が行く。お前らはここにいろ」
「えっ、でも…」
ペトラは “私が行きますよ?” と言おうとしたが、もうリヴァイは扉に向かって歩いていた。
「……了解です」
その背に向かって返した。オルオも叫ぶ。
「了解っす!」
ぱたんと扉が閉まってリヴァイは出ていった。
「なぁ、兵長に行かせずに俺らが捜した方がよくね?」
リヴァイを働かせて大丈夫なのだろうかと心配そうなオルオに、ぴしゃりとペトラは言い放った。
「馬鹿ね。マヤなのよ!」
「へ?」
言葉の意味がわからずに、ぽかんとするオルオ。
「だ~か~ら~! 捜す相手がマヤなんだから、うちらより兵長の方が、マヤにとっても兵長にとってもいいって言ってるの!」
「あぁぁ…」
わかったような、わからないような。
「それってマヤが兵長のことを…、その…」
“好きだからか?” と直接言うのも気恥ずかしくて、口ごもる。
「そうよ! そして兵長もよ!」
「えっ、そうなのか?」
「そうよ、多分」
「多分って」
「私の願望も入ってるけど、そうだと思いたいの!」
「……でもよ」
オルオは次の言葉を口にするのをためらったが、いい機会だと思い直した。
「ペトラは…、その…」
やっぱり訊きにくい。
「何よ、はっきり言いなさいよ」
「兵長のことを好きなんじゃねぇのか?」
……言った!
オルオはずっと訊きたかったのに訊けなかった、ただひとつのことを訊けて、妙な興奮に包まれた。
この質問の答えは知りたいのに知りたくない。ペトラの口から “兵長が好き” だなんて言葉を聞きたくもない。
質問をしておいてなんだが、いっそ耳をふさごうか。
そんな考えが浮かんだ途端に答えは放たれた。
「うん、好きだよ」
ズキン。
オルオの胸は撃ち抜かれたように痛む。
知りたかった答えは、とっくに知っていた答えだ。
「俺にはわからん。だったらなんでマヤと兵長を応援するようなことを…」
「そんなの簡単じゃん。兵長は好きだけど、マヤのことはもっと好き! だから大好きな二人が想い合ってるなら私はそれでいいの!」