第27章 翔ぶ
……ファビュラス? 部屋に名前があるのかよ。
団長室、執務室、会議室、図書室などの名称はあっても、“ファビュラス” のような部屋名は風変わりだ。
……クソ貴族が好みそうなことだな…。
リヴァイはそんなことを考えながら、例のごとくノックをせずに扉を開けた。
数歩足を踏み入れ、ソファでよく眠っているペトラに気づく。そしてそのそばには同じく熟睡しているオルオ。
ペトラの右手を両手で包みこむように握りしめたままの姿勢で眠りこけている。
恐らくペトラが心配で手を握って見守っていたところ、そのまま自身も睡魔に襲われたのだろう。
………。
リヴァイは軽く眉間に皺を寄せながら二人を見下ろす。
オルオの一方的な行為だとはいえ手を強く握っているその光景は、まるで恋人同士だ。
……ペトラのやつ、起きたら怒るだろうな…。
ところで…。
マヤはどこにいる?
部屋にその姿はない。
控えの間には洗面所やトイレットルームがあるので、そちらにでもいるのかと目を閉じて気配をさぐるがシンとしている。どうやらマヤはいないらしい。
「おい…」
ペトラとオルオに声をかけるが、聞こえてくるのはすーすーと穏やかな寝息のみ。
「おい…、起きろ」
少し声を大きくしたリヴァイの呼びかけに反応したのはペトラ。
「う~ん…」
首をゆっくりと左右に振ったかと思うと。
「……もう… 食べられないよ…」
「……俺も」
すかさずオルオも、眠ったままで呼応する。
「……チッ」
起きたかと思えば寝言で仲の良さを見せつけられ、苛立ったリヴァイは舌打ちをした。
「おい、お前ら… 起きろ!」
怒鳴りつけると同時にオルオを蹴飛ばした。
吹っ飛んだオルオは一瞬何が起こったか理解できなかったようで、転んだ姿勢のまま目をぱちくりさせていたが、すぐに仁王立ちのリヴァイに気づいて起き上がった。
「へ、兵長!」
ペトラも目覚めて、上半身を起こす。
「ペトラ、気分はどうだ」
リヴァイは一番にペトラの容体を尋ねた。