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【リヴァイ】比翼の鳥 初恋夢物語【進撃の巨人】

第12章 心づく


マヤの目の前に差し出されたのは、小さな包みとミケ分隊長のはにかんだ笑顔。

その笑顔を前にして、マヤは遠慮する気持ちを捨てた。

「ありがとうございます。大切にしますね…。あっ そうだ、執務室で使います」

「そうしてくれると嬉しい」

穏やかに、二人は微笑み合った。

マヤは、ミケの手に残ったもう一つの包みを見つめる。

「……分隊長の恋が、うまくいきますように」

「……ありがとう」

ミケはハンカチの包みをジャケットの内ポケットに入れると、ヘラクレスの手綱を取った。

「ここで解散しよう」

「はい」

時は昼下がりの午後、まだ街には活気が満ちあふれている。

「しゃれた店でお茶でもすればいいんだろうが、そういう柄でもないしな… すまない」

「そんな…! あんな素敵な場所でご馳走になって、プレゼントまで頂いて…。楽しかったです」

大切そうにマグカップの包みを持つマヤを見て、ミケの頬は緩んだ。

「一人で帰れるか?」

「もう! また子供扱いして」

「ははは」

「ふふ」

ひとしきり笑い合ったあと、マヤはひらりとアルテミスにまたがった。

「では、失礼します」

「あぁ、また明日」

兵舎の方角へ去るマヤの後ろ姿をミケはいつまでも見送っていた。

角を曲がり、マヤはミケの視界から消えた。

……一度も振り返らなかったな…。

ミケはヘラクレスをひき、マヤが消えた方角とは反対の道を行く。

とぼとぼと歩くミケの頭には今しがた別れたばかりのマヤの姿が浮かんでは消える。

馬上で髪をなびかせ、遠くを見つめ手綱を握る凜とした姿。

美味しそうにサンドイッチを頬張る、無邪気な笑顔。

風と友達になりたいと言って静かに微笑んだ瞳。

マヤの声が響く。

……分隊長の恋が、うまくいきますように…。

ミケは行きつけの店の前で歩みを止めた。

そこは路地の奥にひっそりとあり、一人静かに飲みたいときにはいつも足を運んだ。

店のすぐ裏に馬柵があるのも、馬を連れているときには都合が良い。

裏に回ったミケはヘラクレスをつなぎ、水をやりながら空を見上げる。

……今日は… とことん飲むか。

フッと自嘲的に鼻で笑った主を、ヘラクレスは優しい目をして見つめていた。


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