第26章 翡翠の誘惑
「あぁぁ、そうですわね。それは補色の波長を合わせるのは素晴らしい組み合わせですが、同系統の色の波長を合わせるのもまた、間違いのない王道のコーディネートだからですよ」
「そうなんですね」
マヤは、なるほど… よくわかったとうなずいた。そしてペトラも。
「なんだ、そっか。でもまぁ、そう言われたら同じような色で全身かためちゃうことって、よくあるよね。変な色を組み合わせるより断然綺麗だもん。あぁぁ… それにしてもめっちゃ綺麗だわ、この宝石…」
胸元のインペリアルトパーズを見つめながら、その美しさにため息をつく。
「本当にお似合いですよ。レイモンド様のお見立てに間違いはないですね」
髪結いも、にこやかに笑っている。
「まずは色味の観点からお話をいたしましたが、実はそれだけではないんですよ」
「「……えっ?」」
まだ何かあるのかと驚くマヤとペトラ。
「お二人に合うイメージの色で石を決められたというのもあるんですけど、レイモンド様は石の持つ意味でも選ばれたんです」
「石の持つ意味…?」
「そうです」
髪結いは首をかしげているマヤの方を向いて、優しく微笑んだ。
「宝石には石言葉があるんですよ」
「「……石言葉?」」
またもや聞いたことのない言葉だ。
「マヤ、知ってた?」
「ううん、知らない。花言葉みたいなものかな?」
「きっとそうだよ」
ささやき合っている二人に、髪結いが笑いかけた。
「そそ、花言葉の宝石バージョンですよ! それでマヤ様のアクアマリンは “勇敢と聡明”、ペトラ様のインペリアルトパーズは “友情と希望” という意味を持っているんです」
マヤがアクアマリンの耳飾りを見つめながらつぶやく。
「勇敢と聡明…」
そしてペトラも同じくインペリアルトパーズの首飾りに目をやりながら。
「友情と希望だなんて素敵! ますます気に入ったわ!」
「そうね。レイさんは、色も私たちに合わせてくれたし、石の持つ意味までも素敵なのを選んでくれたんだね」
マヤはレイの気配りに心の底から感謝した。