第12章 心づく
押し黙っているミケの横顔を見ながら、マヤはさらにつづけた。
「もしかして分隊長、プレゼントを渡すときに気持ちを伝えないおつもりですか?」
「ただ渡すだけじゃ駄目なのか?」
「もちろんです! 何も言われずに渡されても、理解に苦しみます」
「……そんなものなのか…」
「はい、そんなものです」
ミケは空を見上げていたが、マヤの方に顔を向けた。
「わかった。でもやはり菓子ではなく、何か手元に残る物がいい」
「どうして?」
「さっき言ってただろう? 食べたらなくなるから気楽だって」
「あぁ… はい。言いました」
「食べたらなくなって、そのまま忘れ去られそうだ」
マヤはそれもそうねと思い、同意した。
「まぁ 確かにそうですね…。じゃあ、もらってもそんな負担にならないような何か小物でも…」
眉間に皺を寄せて真剣に考えていたが、少し大きな声を出した。
「うーん 駄目です! イメージできない…」
「分隊長、その相手の方はどんな感じの人ですか? それがわからないと何も浮かびません」
ミケは短く笑った。
「はは、えらく真面目に考えてくれているんだな」
「当たり前です! 分隊長のためですもの」
「それは ありがとう」
「……で、どんな方なんですか?」
ミケは少し困ったような顔をする。
「……そうだな…。よく見たら美人で、笑うと可愛い」
マヤはすぐさま、その琥珀色の大きな目を見開いた。
「よく見たら…だなんて、失礼ですね…」
ミケはますます困った顔をする。
「あ、いや… その子…、いやその人は、派手で目立つ感じじゃないんだ。だから気づかずに通り過ぎてしまいそうになるが、一度気づいてしまうと…」
言葉が途中で途切れたのでマヤが顔を上げると、この上もなく真面目な顔をしているミケと視線が絡んだ。
「その美しさから、目が離せなくなる」
ミケの声がやけに真剣で、その瞳はあまりにもひたむきなので… マヤの胸はトクンと跳ねた。