第12章 心づく
一瞬で通り過ぎた美しい髪が消えた正門の向こうをいつまでも見送っていると、次の蹄の音が近づいてきた。
……チッ…。
リヴァイにはその蹄の主を見なくても、手に取るようにわかった。
案の定ミケが、ヘラクレスとともに眼下を通り過ぎる。
マヤを追うように出ていくその姿が、リヴァイには勝ち誇っているように思えた。
マヤを追うのは自分とオリオンであるべきなのに、実際に追っているのはミケとヘラクレスだ。
その現実に苛立ち眉間に皺を寄せたとき、扉をノックする音が響いた。
「「失礼します」」
オルオとペトラが入ってきた。
「兵長、おはようございます」
「あぁ… おはよう」
リヴァイは外に目を向けたまま、振り返りもせずにつぶやいた。
オルオとペトラは執務机の前まで進み、直立不動の姿勢を取る。
………。
二人は直立したまま待っていたが、リヴァイは窓の外を食い入るように見たままで動く気配がない。
オルオとペトラは黙って顔を見合わせた。
ペトラが目で合図する。
……ちょっと、どうなってるのよ!
オルオも口パクで言い返す。
……知らねぇよ!
……なんとかしなさいよ!
……なんで俺が。お前が言えよ!
二人は小突き合っていたが、とうとうペトラが遠慮がちに発言した。
「……兵長? どうかされましたか?」
その声にリヴァイはゆっくりと窓から離れた。
オルオとペトラを見ると、今初めて二人に気づいたような顔をして立ち止まったが、すぐにその表情は何も読み取れないものになった。
「……いや、なんでもない。オルオはこの書類を。ペトラは…」
胸がふさがるような想いを抱えながら、二人に指示を出した。