第12章 心づく
翌日の午前10時過ぎ厩舎に行き、まっすぐアルテミスの馬房に向かう。
ヒヒーン! ブルルルル、ブルッ!
「おはよう、アルテミス」
無口をつけながら、話しかける。
「今日はね… ミケ分隊長と出かけるのよ。だからヘラクレスと一緒よ?」
ブルルル、ブルッ!
「ふふ、嬉しい?」
無口をつけ終えたマヤは、アルテミスをひき蹄洗場に向かった。
「おはようございます」
ミケはもう来ていた。
「おはよう」
ブヒヒヒン! ヒヒーン!
アルテミスとヘラクレスも、まるで挨拶をしているように鼻を鳴らし合う。
すでに馬装を終えているミケに、マヤは謝った。
「すみません、遅くなって…」
マヤは急いでアルテミスに鞍を乗せ腹帯を調整しながら慎重に締めた。
「いや、まだ約束の時間前だ」
ミケの言葉を聞きながら、アルテミスに慣れた手つきで無口を外し頭絡を装着する。
アルテミスもマヤの流れるような手順に身を任せている。
「お待たせしました」
アルテミスの馬装が終わったマヤに、ミケは告げた。
「マヤ… 先に出て、街の西の出口で待っていてくれるか」
「はい。……あの、分隊長はどこへ?」
「ちょっとな… あとで合流しよう」
「はい」
マヤはアルテミスに軽やかに飛び乗ると、首すじにそっと手をふれささやいた。
「アルテミス、お願いね」
ブヒヒヒン! ヒン!
アルテミスは応えるようにいななくと、駆け出した。