【リヴァイ】Calmi Cuori Appassionati
第6章 Untainted, Unbroken ※
夜が更けていく。
先ほどまでかろうじて見えていた月も姿を消した。
全身が痛い。
首から下が麻痺したように動かない。
悪夢は30分も前に終わったというのに。
自分を凌辱した男は、すべてを吐き出すと無言で立ち去った。
謝罪の言葉も、態度も無かった。
この無力感はいったいなんなのだろう。
寒い。暗い。怖い。
もう、自分が何を感じているのかわからない。
泣きたいのか、笑いたいのかもわからない。
辺りに立ち込める、血の匂い、精液の匂い、アルコールの匂い、嘔吐物の匂い。
ここは壁内のはずなのに、どうして地獄に思えるのだろう。
立ち上がらなきゃ・・・
部屋に戻って寝よう。
朝を迎えれば、きっと良くなっているかもしれない。
「・・・ッ・・・!」
ほんの少し状態を起こしただけで、下腹部に激痛が走った。
股の間がぬるりとする。
気持ち悪い。
泣きたいのに涙は出ず、顎だけがひくついた。
そばの木につかまりながら、ゆっくりと立ち上がる。
ボロボロになったシャツの前を合わせ、右足首にかろうじて引っかかっていたズボンを履いた。
あとは下着の残骸を拾って・・・
そこで意識が途切れそうになった。
木に寄りかかり、そのままズルズルとへたりこむ。
ダメだ、部屋に戻れそうにない。
すると、廊下の向こうから人の話し声がした。
こちらにやってくる人間が2人・・・
この声は・・・
「誰?誰かそこにいるの?」
ランプの灯りがこちらに向けられる。
「サクラ!!」
ああ、安心できる声だ。
サクラは涙を一粒だけ流し、そのまま意識を失った。