【リヴァイ】Calmi Cuori Appassionati
第2章 Light Behind the Clouds
「私は巨人を見たことがない。でも、恐ろしさは分かる。サクラ、あなたのような普通の女の子を兵士へと変えてしまうほどの存在なんだもの」
「フリーダ・・・」
「私が調査兵団を選んだのはね、高い志があるわけでも、自信過剰だったわけでもない。黙っていたら、人類が滅びると思ったから。憲兵や駐屯兵のように、鳥籠の中だけに目を光らせて、巨人の脅威から人類を守っているつもりになるのは嫌だった」
第102期訓練兵団5位の成績で卒業した、フリーダ。
誰よりも思慮深く、先を見据える力があった。
「私は、死ぬのが怖い。サクラと違って、エルヴィン団長の命令でも逃げ出してしまうかもしれない」
フリーダは震える手で拳を作り、そっと心臓に当てた。
「私にはリヴァイ兵長のように、4000人分の力があるわけじゃない。でも、弱い力だからこそ、立ち上がらなきゃと思ったの。リヴァイ兵長は一人だけど、4000人が立ち上がればリヴァイ兵長クラスの力を人類はいくつも得ることになる」
そこまで考えていたのか。
サクラは言葉が出なかった。
約3万人が所属している駐屯兵団に対し、調査兵団は約300人。
死を恐れ、立ち上がろうとしなかった兵士が、壁内で人類を守っているような気になっている。
最後の砦となって巨人から市民を守るという役目があるにせよ・・・
結局のところ、本当に巨人に立ち向かう勇気があるのは調査兵だけなのだ。
事実、3年前のあの日、自分が生き残るために幼い子供を生贄として巨人へ放り投げたのは、駐屯兵だったではないか。
黙り込んでしまったサクラを見て少し喋りすぎてしまったと思ったのか、フリーダは恥ずかしそうに笑うとサクラの背中を叩いた。
「さ、食堂に行こう!遅刻したら、早々に除隊命令を出されてしまう!」
フリーダの背中を追いかけながら、できれば彼女と同じ班がいいな、とサクラは思った。
普段は女の子同士、恋愛話や噂話に花を咲かせていた。
でも、心の底では誰よりも熱い想いを抱いていたなんて、知らなかった。
もっと、いろいろなことを教えて欲しい。
「フリーダ」
「ん?」
「死なないでよね」
フリーダはサクラを振り返り、瞳を大きくした。
そして、微笑む。
「うん。お互いにね」
サクラも、微笑んだ。