【リヴァイ】Calmi Cuori Appassionati
第23章 My Love Blooms for You
「それからエレンだが・・・アイツがこの先どうなるのかはもう、俺にも分からない」
リヴァイを遥かに凌ぐ力を得た代償に、あと7年の命しか残されていない青年兵。
“なぁ・・・? 向こうにいる敵・・・全部殺せば・・・オレ達自由になれるのか?”
生まれて初めて海を目にしたエレンは、自由だと信じていた地にこそ敵がいると知り、絶望的な瞳で見つめていた。
サクラはエレンにそんな道を歩んで欲しくなかっただろうが、もう誰にも止めることはできない。
“お願いです、リヴァイ兵長・・・その子は来年、必ず調査兵団に入ってきます。どうか、彼を守ってあげてください”
サクラの願いだからどうしても叶えてやりたかったが、それは無理だろう。
あいつはどんな犠牲を払っても自由のために戦う、“進撃の巨人”なのだから───
「安心しろ、エレン一人を地獄に落とすことはしねぇよ」
人類のために犯した罪でエレンが神に裁かれるとしたら、俺も同じ業火に焼かれてやるよ。
ただ、その時はもうお前に会う事はできねェだろうな。
「なぁ、サクラ・・・お前の目に今、どう映っている?」
お前が愛したこの世界。
お前が愛した人間達。
そして・・・
「この俺はどう映っている?」
あの“獣の巨人”にすら「化け物め」と言わしめたこの俺は、お前の瞳にどう映っているのだろうか。
「俺の目にはもう何も映っていない」
お前が愛したこの世界も、
お前が愛した人間達も、
おれにとっては“無”に同じ。
これまで話してきたように、ただ守らなければならないだけの、それ以上でもそれ以下でもない存在だ。
そんな風に思う俺はもう、すでに心を失くした化け物なのかもしれない。
「お前に愛される価値のねぇ男かもしれないな」
サクラ・・・
俺は怖い。
この世界からお前が生きていた痕跡が一つずつ消えていくのが。
お前と見たこの景色すら、今の俺には美しいと思えないのが怖くて仕方がない。
“リヴァイ兵長”
お前がもう一度俺の名前を呼んでさえくれれば・・・
“兵長のお顔が桜色です”
俺はサクラのいないこの世界を、愛することができるのだろうか───