【リヴァイ】Calmi Cuori Appassionati
第23章 My Love Blooms for You
「気持ちが悪いほどの静けさだ。たいして声を張り上げなくても聞こえるだろ?」
コツンと後頭部を木にあてて、小さく溜息を漏らす。
「さて、どこから話そうか」
兵士長の言葉を待っているのか、幾千もの花弁がゆらゆらと揺れている。
そういえばサクラもリヴァイが何か話そうと口を開くと、嬉しそうに微笑んだ。
俺の口から出る言葉なんざ、ロクなもんじゃなかったはずなのに・・・
そう自嘲してみるものの、一つも聴き洩らさないようにとじっと耳を傾けていたサクラを思い出して自然と温かい気持ちになる。
「そうだ、海を見た───」
終わりが見えないほど巨大な湖だ。
俺達の世界はとてもちっぽけなもので、その“海”というものを渡った先に本当の世界があるらしい。
「でもあれはいいもんじゃねぇな。そこにいるだけで体がベタベタするし、砂まみれになる」
それでもお前ならきっとエレン達と一緒に足を水に付けていただろうな。
“見てください、兵長! どこまでも青が広がっています”
遠くへいくにつれて濃さを増す青色を指さして笑う、その顔が容易に想像できちまうほど、お前はまだ俺の中で鮮やかな存在だというのに───
「少しも綺麗だとは思わなかった」
海原の青。
田園の緑。
夕焼けの赤。
月の銀白。
どれも俺にとっては灰色に同じ、この世界を彩るものではなかった。
だからこそ、最後の“この場所”だけは違って欲しいと願っていた。
「まずは礼を言う。また同じ景色を見せてくれてありがとう」
見上げれば、満開の桜の隙間から星空。
感謝の言葉に反応するように、ヒラヒラと薄桃色の花弁が舞い落ちてくる。
「だが・・・やはりお前と見た時ほどの感動はねぇ」
桜の薄桃色でさえも・・・
手の平をスルリと滑り落ちていく感触しか感じることができない。
「なぁ、サクラ・・・お前の目には今、この世界はどのように映っている?」
お前が死んでから、100年以上止まっていた人類の時計の針がものすごいスピードで動き始めた。
しかし果たして、お前が望んだ形であるだろうか・・・・・・