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【リヴァイ】Calmi Cuori Appassionati

第23章  My Love Blooms for You




「桜・・・」

一年のうちにたった数日しか咲かせない花は今、リヴァイの目の前でその短い命を煌々と燃やしている。

リヴァイは疲れも忘れ、群生する桜の一本に近づくとそっと幹に触れた。

サクラはこの花を見た時、言葉を失っていた。
涙を流す彼女を抱きしめながら思った。

───なんて美しい光景なのだろうか、と。


「・・・・・・・・・・・・」


だが、今リヴァイの手が触れているのは、ゴツゴツとした木の肌。
風で花が揺れる音以外は何も聞こえない。


「ここに来りゃお前に会えると、淡い期待を抱いてもみたんだが・・・」


小さく口から洩れた息は、溜息か、それとも自嘲気味の笑いか。
リヴァイは辺りをグルリと見渡してから、左手に持っていたランプを地面に置いた。
そして落ちていた桜の花弁を一枚拾う。

落ちてから随分と経つのか、それは茶色く朽ちかけていた。


「お前と一緒に見たこの景色も、花の感触も、何一つ変わらねぇのに、何故だろうな」


力が抜けた指先からヒラヒラと落ちる、死んだ花弁。
風がそれを闇の向こうへと運んでいく。

それを見つめる三白眼も、同じく暗い色をしていた。


「あの時のような気持ちにはならねぇな」


ああ・・・
もしかしたら、自分にはもう人間の心が無いのかもしれない。

サクラが死んだあの日、世界は全ての色を失った。

それでも守ろうとしてきた。
お前が尊敬し、愛していた奴らを無駄死にさせないように。


「だが、“世界”ってのは俺らが思ってたような単純なモンじゃなかった」


ああ、なんだか酷く疲れた。
どこまで・・・なにまで守れば、俺はお前にもう一度触れることができるのだろうか。

リヴァイは馬を傍の木に繋ぐと、自分は一番大きな桜の下に腰を下ろした。

そこはかつてサクラと一緒に横になった場所。
疲れた翼を休めるかのようにリヴァイは体重を老樹に預け、星が輝く空を見上げた。





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