【リヴァイ】Calmi Cuori Appassionati
第23章 My Love Blooms for You
馬の蹄が土を蹴る音。
頬をピシャリと叩くように夕暮れ時の冷たい空気が流れていく。
あの日・・・
サクラと二人で壁外遠征をした日。
自分の中で二つの感情が入り混じっていた。
兵士として未熟なサクラを危険な目に遭わせる罪悪感。
それでも彼女にとって特別な景色を自分も見てみたいという欲求。
彼女に申し訳なく思う気持ちと、彼女を大切に想う気持ち。
どちらもそれはリヴァイにとって初めての感情だった。
「もうすぐ日が完全に落ちるか・・・」
ほんの数年前までこの辺りは巨人の活動領域で、足を踏み入れるのは調査兵団だけだった。
しかし今は牧場に点在する民家の窓から穏やかな生活の灯が零れている。
「先を急がねぇとな」
手綱を強く引けば、栗毛色の馬がその脚を速める。
視界に流れていく牧場、畑そしてウォール・マリアのあちこちで感じる人々の息遣い。
もし運命が少しでも違ったものであったなら、自分達もこの地のどこかに大きな花壇のある家を建て、そこで暮らすことができていたのだろうか。
「チッ・・・」
この平和な風景を見て舌打ちしたのは、感傷に浸る自分を嫌ったからでも、そのような未来が自分に訪れなかった事を恨んでいるからでもない。
彼女が望んでいたであろうこの景色を見ても・・・
少しも美しいと思えない自分がいるからだった。