【リヴァイ】Calmi Cuori Appassionati
第23章 My Love Blooms for You
「・・・エレン?」
「すみません、何でもないです」
オレの寿命はあと7年。
最後に会った夜、彼女にキスをした時には分からなかった感情を、理解するための時間はもう残されていないだろう。
“ちゃんと見守ってるからね”
オレはお前がどんな最期だったかを知らない。
第55回壁外調査の記録では、遺体無しとして死亡が確認されているから、形も残らないほど巨人に喰われてしまったんだろ。
“エレン・・・あまり多くを背負いすぎないでね”
オレには無理だよ。
死んだ奴らを忘れることなんてできないし、裏切った奴らを許すことはできない。
「ハンジさん。明日、少しだけ兵団から離れてもいいですか?」
「え? そりゃ構わないけれど・・・何か用事?」
「街外れの所まで兵長を迎えに行きます」
この壁の中にはまだ、新女王とそれを支持する勢力を敵視する者達がいる。
リヴァイは言わば、ヒストリアが治める国の核だ。
ライナー達のような“壁外”の敵だって、いないとは断言できない。
「オレはリヴァイ兵長に指名された兵士です。兵団に対して良くない感情を持っている人間が存在する以上、兵長やハンジさんを一人で行動させるにはいきません」
するとハンジは何かを思い出したのか、クスクスと笑った。
エレンの口ぶりはまるで、リヴァイに指名された事を誇りに思っていたエルド達のようではないか。
“貴方に“指名”された我々は、どこまでも貴方について行くのが“使命”です”
“それがリヴァイ班だということを、どうかお忘れなく”
「そういえば君は今や、一番古株のリヴァイ班だったね」
どんなに大切でも、思い出というのは時がくれば失われるもの。
私の中にある思い出は、私が死ねば無くなってしまう。
この長い歴史の中で、そうやって失われていった大事な記憶はどれほどあるのだろう。
そう思うと、巨人の力として記憶が受け継がれていくことが少しだけ羨ましくもあり、恐ろしくもある。
その記憶に囚われ、自分を見失ってしまうこともあるのだから。