【リヴァイ】Calmi Cuori Appassionati
第23章 My Love Blooms for You
“ハンジ分隊長は・・・”
目を閉じれば、彼女の最後の声が聞こえてくるようだ。
“人間と巨人の垣根を超えようとしている。巨人が存在する意味、そして共存する道を探している”
ああ・・・忘れていたよ。
既存の概念に囚われず、自分の視点で巨人の秘密を解き明かしたいと思っていたかつての自分を。
“私は、そんな分隊長を尊敬しています”
そう言ってくれていたのにね・・・
春というのは不思議な季節だ。
凍てつく冬の間眠っていた命を目覚めさせるように、心の底に沈めていた想いや記憶を再び呼び起こしてくれる。
「私はどうやら、彼女の言葉を思い出すには少しばかり心苦しい道を辿ってきてしまったようだな」
ハンジは自嘲気味に笑うと、最後の別れを惜しむように枯草を見つめた。
もしかしたらもう二度とこの場所に来ることはできないかもしれない。
リヴァイも覚悟を決めているからこそ、あの花を見に行くと言い出したのだろう。
次の戦いで犠牲にするのは命だけではないと────
「ハンジさん」
全ての鍵を握る青年兵はすでに命以上のものを犠牲にしている。
母親を目の前で殺されたあの日・・・いや、この世に生まれついたその瞬間から、彼はこの世界の在り方を憎み、ただひらすらに自由を求めてきた。
「オレはハンジさんは間違ってないと思います」
エレン。
君の目は時々、巨人に慣れた私ですら怖いと思うことがある。
「ハンジさんがそんな風に言うほどの兵士まで死ななければならなかったこの世界が───間違っている」
だからそれを壊すことが何故いけない?
そのために罪のない人間が死ななければならなかったとしても、それは仕方のないこと。
母さん、ハンネスさん、マルコ、トーマス、ミーナ、ペトラさん、オルオさん、エルドさん、グンタさん、エルヴィン団長・・・
向こうだって壁内の世界を壊すために命を奪っていったじゃないか。