【リヴァイ】Calmi Cuori Appassionati
第5章 Eye of the Silver Wolf
「オルオ・・・リヴァイ兵長に感謝しなさいよ」
リヴァイの後ろ姿をじっと見つめていたペトラが、掠れた声でつぶやいた。
大事な部下を失ったのに、その原因となった男に罵声一つ浴びせず・・・
亡くなった者の無念も、過ちを犯した者の懺悔も、すべて受け止めながら表情を変えることは無かった。
「あんたは、兵長に2度も救われたのだから・・・」
巨人から命を救ってもらい、
後悔の念に押しつぶされそうになった心を救ってもらった。
「ああ・・・俺は・・・一生、あの方についていくよ・・・」
オルオはさっきまでリヴァイが触れていた肩を抑え、しゃくり上げながら誓う。
きっとオルオはもう大丈夫だろう。
前を向いて、兵士としての役割をまっとうできる。
でも、サクラには気になることがひとつあった。
それは、リヴァイがテントを出て行く間際、ほんの一瞬だけ悲痛の表情を見せたこと。
誰も気がついていなかったし、もしかしたら見間違いだったかもしれない。
しかし、眉根を寄せて苦しそうに唇を噛んでいたような気がする。
リヴァイ班に所属する兵士は、班長であるリヴァイ自らが指名すると聞く。
自分が選んだ者の死だ。
悲しみが無いわけ、ない。
強いから、それを押し殺しているだけなんだ。
サクラはテントを出て、リヴァイの姿を探した。
不寝番の兵士に尋ねると、森の中へ入っていったという。
「やっぱり・・・優しい人だ・・・」
夜の森は巨人の脅威は無いが、野生の動物に襲われる危険がある。
だけど構わずに走った。