【リヴァイ】Calmi Cuori Appassionati
第23章 My Love Blooms for You
「やぁやぁ、二人ともなかなか戻ってこないから探してしまったよ」
「ハンジさん!」
兵舎の方から手を振りながらやってくるのは、調査兵団の現団長。
恐らく、軍会議を途中で退席したまま戻ってこない二人を探しにきたのだろう。
「リヴァイ。私の記憶が正しければ、君に遠征許可を出した覚えはないのだけどな」
「ちっ・・・」
ハンジはニコニコとしているものの、眼鏡の奥にある瞳が笑っていない。
明らかに壁外遠征の出で立ちをしているリヴァイに、何も聞いていないぞと目を光らせている。
「どこへ行くつもり?」
「まぁ・・・クソじゃねェことだけは確かだな」
「そうだね、そんなに遠くへ行かなくても便所はこの兵舎にだっていくつもある」
ハンジは何日も洗っていない頭を掻きながら、柔和な態度は崩さないまま、少し低い位置にあるリヴァイの目を真っ直ぐと見つめた。
「会議はまだ終わっていない。今後も“エルディア人”の最前線で戦ってもらうことになる君には、ぜひとも最後まで参加してもらいたいんだけどな」
「エルディア人ってのはやめろ。吐き気がする」
ハンジは上司二人に挟まれて少し居心地悪そうにしているエレンの肩をポンポンと叩くと、リヴァイの外套に刺繍された“自由の翼”を懐かしそうに見つめた。
「どこへ行くつもりかだけでも教えてよ」
「・・・お前には関係ねぇ」
「報告義務はあるはずだ。君がその紋章を背負っている限り、ね」
事実上壊滅したとはいえ、リヴァイは調査兵団の最高戦力。
無断で軍事会議を欠席することも、“団長”に黙って単独行動をとることも本来は許されない。
「・・・どうしても報告しなければならねぇのか」
「ああ。相手がエルヴィンだったらそうしていただろ?」
ハンジは全てを見透かすような瞳でリヴァイを見つめ、ニコリと微笑んだ。
喧嘩をしているわけでもないのに漂う緊張感は、在りし日のエルヴィンを思い起こさせる。
「リヴァイ、君はいったいどこへ行こうとしているの?」
いったいいつからだろう。
ハンジがあの壮絶な“ウォール・マリア最終奪還作戦”で命を落とした前団長を彷彿とさせる迫力を漂わせるようになったのは。