【リヴァイ】Calmi Cuori Appassionati
第23章 My Love Blooms for You
それは今から数時間前のこと。
ただならぬ様子で軍事会議を途中退席したリヴァイをエレンが呼び止めたのは、兵舎裏の馬小屋だった。
「外出ですか、リヴァイ兵長」
長旅に備えてか馬に水をやろうとしていたリヴァイが、うざったそうな表情を隠そうともせずエレンを振り返る。
「見て分からねぇか?」
「でもまだ会議が終わっていません」
6年ぶりのウォール・マリア外への遠征から戻ってきて数週間。
今後の方針を検討する会議は延々と続いている。
意見はあらかた出尽くしたし、あとはハンジがどう決断を下すかだ。
「ここまできたら俺はいてもいなくても同じだ。お前はハンジのところへ戻れ」
「それはオレにとっても同じことです。話せることは全て話したし、あとはハンジさんとアルミンの決めたことに従うだけです」
「さぁ、それはどうだろうな」
リヴァイは以前と比べて随分と大人びた顔つきになったエレンを見上げた。
彼には“人類のため”という理由で、何度も辛い選択をさせてきた。
その度に心身共に酷く傷ついてきた若い兵士。
それでも、彼の瞳の奥にある意志は揺るがない。
「俺もハンジも・・・いや、壁の中の奴等は結局、お前のその化け物じみた信念に従う事しかできねぇんだからよ」
だから会議などやっても無駄だ。
せいぜい「どうすれば犠牲を最小限に抑えられるか」を考えることぐらいしかできないだろう。
その言い方はリヴァイのものとしては珍しく無かったのだが、エレンは心に引っかかりを覚えていた。
「ハンジ達のところに戻れ、エレン」
「でも、じきに日が暮れます。夜に一人で馬を走らせるのは危険ですよ」
「・・・なんだそれは。誰に向かって言ってる」
なかなか引き下がらないエレンに苛立ちを募らせていると、空気を読まない陽気な声が後ろから聞こえてきた。