【リヴァイ】Calmi Cuori Appassionati
第22章 Let Your Heart Be Light
聞いていると心が温かくなるのに、どこか切なくもなるメロディー。
それは誰かの幸せを願う歌だからだろうか。
そばにいる人間も、そうでない人間も、この日は笑顔でいて欲しい。
苦しかった記憶はもう過去のもの。
運命が許してくれる限り、一緒に居たいと思う人達には幸せになって欲しい。
サクラはもちろんのこと、“過去”に壮絶な運命を辿らずにはいられなかったエレンやミカサ・・・
志半ばで死んだエルヴィンに、大切な人を失うばかりだったハンジには、この世界で幸せになってもらいたい。
「・・・俺が願うまでもなく、あいつらはもう幸せか」
かつて兵士長と呼ばれ、その心臓を人類のために捧げた彼の口元に笑みが浮かぶ。
そして、短いクリスマスソングが終わる頃、リヴァイは小さな建物の前に立っていた。
「教会・・・?」
当然、深夜だから辺りに人影はない。
しかし、鉄でできた門は開いていた。
スマホの地図アプリは確かにこの場所を示している。
しかし、なぜサクラがこの場所を指定してきたのか分からなかった。
リヴァイもサクラもキリスト教ではない。
ミサに出たいというなら出てもいいが、こんな深夜に行われるものなのか?
「サクラ、どこだ」
返事はなく、辺りはシンと静まり返っていた。
訝しがりながらアーチ型の扉を開けると、その先に広がっている光景にリヴァイの瞳が広がる。
「・・・ここは・・・」
そこは、小さな礼拝堂。
ここから正面の祭壇までは10メートルあるだろうか。
通路の両脇には4人掛けの長椅子が、それぞれ縦に10脚ずつ並んでいる。
通路を照らすように、そのひとつひとつにロウソクが置かれ、小さな火がユラユラと揺れていた。
ドクン・・・
ドクン・・・
目の奥がツンと熱くなる。
リヴァイは初めて見るこの景色を“知って”いた。
「・・・・・・・・・・・・」
光の、その先。
太陽が照らせば美しい七色に輝くだろうステンドグラスの窓を背にして、誰かが立ってる。