【リヴァイ】Calmi Cuori Appassionati
第22章 Let Your Heart Be Light
「ハンジの野郎、いくらなんでも仕事を押し付けすぎだろ・・・」
リヴァイが会社を出る頃はすでに、夜11時を回っていた。
エレンが手伝うと言ってくれたが、定時になるとミカサに引きずられるようにして帰っていった。
おそらく、エレンのために腕を振るって豪華な夕食を用意するつもりなのだろう。
“邪魔をしないで”と言いたげな目を向けてくるミカサを見たら、エレンを引き留めるわけにもいかなかった。
「エルヴィンものん気にクリスマスカードをメールで送ってきやがって・・・」
エルヴィンは今、リヴァイが務める会社の副社長をしている。
ハンジは本社の経営戦略部部長。
エレンとミカサは、リヴァイが海外支社へ転勤すると聞きつけ、一緒にやってきてしまった。
“今から帰る”
スマホのメールアプリでサクラに送ったが、既読がなかなかつかない。
この時間なら間違いなく家にいるはず。
もう寝てしまったのだろうか。
冬の冷たさの中、駅までの道を急いでいると、どこからともなくクリスマスソングが聞こえてきた。
聖なる夜を祝う温かい歌詞に、それまで険しかったリヴァイの表情がふと和らぐ。
小さい頃は、クリスマスが嫌いだった。
もともと母子家庭だったが、幼い頃に母親を亡くしたリヴァイを育てたのは伯父のケニー。
お世辞にも子育てに向いている男とは言えず、寂しい思いをすることの方が多かった。
家族で集まり、温かい暖炉の前で御馳走を食べるというクリスマスを、誰かと祝った記憶はない。
リヴァイにとっては、欲しくもないおもちゃがケニーから届き、いつものように冷たいパンをかじる日でしかなかった。
でも・・・今は違う。
一緒に祝いたいと思う人が、すぐそばにいる。
質素でもいい。
テーブルの上には温かいスープとチキン。
火の灯ったキャンドルにポインセチア、その向こうに彼女の笑顔があれば、それ以外には何もいらない。
「早くサクラの所に帰らねぇとな・・・」
この寒い夜、彼女を抱きしめ、体温を分かち合いながらともに眠ろう。
聖なる夜、リヴァイが望むのはそんなささやかな幸せだった。