【リヴァイ】Calmi Cuori Appassionati
第22章 Let Your Heart Be Light
「身体が冷たくなってる。何も羽織らねぇからだ」
温かい布団の中で抱きしめてやると、サクラは嬉しそうに微笑む。
記憶の中の彼女はまだ幼さが残っていた。
それ以上年を重ねることはできなかったが、今のサクラはすでに当時の年齢を超え、大人びた表情を見せることもある。
リヴァイはそれが、たまらなく嬉しかった。
一緒に年を重ねていける、ただそれだけのことが。
「12月の早朝にわざわざ起きて読むほど面白い本なのか?」
「はい、とても悲しいけれど素敵なお話なんです」
「・・・・・・・・・・・・」
「一人の女性を深く、深く愛してる男性の話です。ずっと男性の片思いだったのですが、ある日女性が男性に提案をするんです」
たった一日でいい。
私と会わず、口もきかずにいられるかしら?
もしそれができたなら、私は一生貴方のものよ。
「・・・やめろ」
ストーリーを語ろうとしていたサクラを止めるように、リヴァイはその唇に口づけをした。
その先のことは聞きたくない。
まさか、この世界にも同じ小説があったとは・・・
いや・・・さっきの夢が“記憶”ではなかったのか・・・?
「兵長?」
サクラは普段、リヴァイのことはリヴァイさんと呼ぶが、ときどき無意識に“兵長”と呼ぶこともある。
そんな時は大抵、前世の記憶が混濁している。
サクラにどれだけの記憶が蘇っているのかは知らないが、もし死ぬ日の朝の記憶が戻っていないのなら、思い出させたくはない。
誰だって死と直面するのは怖い。
それが自分の死であろうと、他人の死であろうと、そして・・・
過去の死であろうと。