【リヴァイ】Calmi Cuori Appassionati
第22章 Let Your Heart Be Light
どこまでも広がる草原。
朝焼けが空を金色に染める。
美しいとは思わない。
それでも、この景色を守りたいと思う。
どんなに残酷な世界だろうと・・・
サクラが心から愛した場所だから。
「リヴァイ兵長、こちらです」
今回の遠征で失った兵士はいつも以上に多かったというのに、持ち帰ることができた遺体はごく僅かだった。
「今回の壁外遠征の死者・行方不明者は112名、そのうち遺体を回収できたのは28名です」
それは荷馬車班が壊滅し、遺体を運ぶ手段が無かったのが原因。
80名を超える兵士がウォール・マリアの地に置き去りとなっている。
リヴァイの瞼の裏に、教会の祭壇で横たわる一人の女兵士の遺体が浮かんだ。
「壁外に置いてきた奴のリストは?」
「こちらに。団長にも提出してあります」
「そうか・・・ごくろうだった、あとは俺が引き受ける」
112名の名前が書きだされたリストの中には、一番死んで欲しくなかった者の名前も載っている。
リヴァイは並べられた遺体の前に跪いた。
彼女の身体もこうして持って帰ることができていたなら・・・
いや、たとえできていたとしても、きちんと弔ってやれたかどうかは分からない。
その愛しい身体をいつまでも手放せず・・・
幼い自分を残して死んでいった母のように、身体が腐ってもベッドの上に寝かせたままにしていたかもしれない。
「よくやった・・・お前らを誇りに思う」
ここにいる兵士と、壁外に残してきた兵士へ。
涙を流すことすらできない兵士長は、静かに瞳を閉じ、彼らに黙祷を捧げた。