【リヴァイ】Calmi Cuori Appassionati
第22章 Let Your Heart Be Light
リヴァイの体温を背中に感じながら、サクラはだんだんと明るくなっていく窓に目を向けた。
もう少ししたら“自由の翼”の紋章がついた兵服を着て、集合場所に向かわなくてはいけない。
初めて壁の外に行ったのは、第35回壁外調査だった。
あれから、野営を伴う遠征から壁の周辺を周るだけの簡単な調査まで、幾度となく巨人が支配する地に足を踏み入れた。
「兵長・・・もし今日一日、私と会わず、口もきかずにいてくださったら、私は一生貴方のものですと言ったら、貴方はそうしてくれますか?」
「・・・条件を出してるつもりか、それは」
薄いカーテンの隙間から差し込む朝日が眩しかったのか。
リヴァイは顔をしかめながら、サクラの問いかけに答えた。
「悪いが俺は、お前が俺のものにならなくても仕方ねぇと思ってる。これでも自分の異常さは分かってるつもりだ」
「・・・・・・・・・・・・」
「お前が誰かのものになるというのなら、そいつを殺すまで・・・だからお前は好きな奴のものになればいい」
青白い三白眼には、一切の冗談がない。
リヴァイはその生い立ちのせいか、人の愛し方が下手だった。
彼の仲間や後輩達は、兵士長がどれだけ自分のことを大切に思っていたか、死んでからでないと知ることができない者がほとんど。
だがリヴァイは、どんなに無残な死に方をした兵士でも、決して目を逸らしたりはしない。
死臭が身体に染みつくまでそばにいて、彼らの遺志を継ぐ。
「貴方はこの物語の男性とは違う・・・」
貴方はとても強い人。
───ああ・・・私は生きているうちにこの人から愛されていると知ることができて幸せだ。
サクラは心からそう思った。
「私はすでに貴方だけのものです、リヴァイ兵長」
そう言って、テーブルの上に置いたままの小説をそっと撫でる。
女性が何故、男性の愛を確かめるようなことをしたのか。
それは語らずに・・・
「なら死ぬんじゃねぇぞ、サクラ」
しかしサクラは、“自由の翼”のごとく真っ白な朝日を背に微笑んだだけだった。