【リヴァイ】Calmi Cuori Appassionati
第22章 Let Your Heart Be Light
運命の日ほど、その朝は穏やかなもの。
第55回壁外調査。
その日、リヴァイは目覚めると横に寝ているはずのサクラの姿がないことに気づき、身体を起こして部屋を見渡した。
「サクラ、そこで何してる」
まだ薄暗いというのに、明かりもつけずにテーブルに向かっている。
その手には、あの時の恋愛小説の本を持っていた。
「兵長、起こしてしまいましたか? すみません」
「いや・・・構わねぇが・・・本なら別に今読まなくてもいいんじゃねぇのか」
「もう少しで終わりそうだったから、読み終えてしまおうと思って」
そう言ってパタンと本を閉じた瞬間、右手で心臓の上を抑える。
リヴァイは眉間にシワを寄せながらベッドから降りた。
「お前、また心臓が痛むのか」
「・・・・・・・・・・・・」
“許されない力”を持ってしまったサクラの心臓は、異常なほど肥大してしまっている。
だが、そのことを彼に明かすわけにはいかない。
「・・・いいえ、この小説の結末がとても悲しくて・・・優しいものだったから、心が苦しくなりました」
それも嘘ではない。
たった今、読み終えたばかりのこの小説の結末は、あまりにも悲しい恋の終わりだった。
「そうか・・・俺はてっきり、お前がまたぶっ倒れるんじゃねぇかと」
「ご心配おかけしてすいません」
「いや・・・お前には悪いが、その方がいいと思ってた」
まだ身体が本調子ではないのだろう。
昨晩、“無理”をさせてしまったこともあるし、できることなら壁外に行って欲しくない。
また心臓が痛んだのなら、それを理由に遠征へ帯同せずにすんだのに・・・