【リヴァイ】Calmi Cuori Appassionati
第5章 Eye of the Silver Wolf
「へ・・・いちょう・・・・・・」
兵士が喘ぎながらリヴァイを呼んだ。
もうその目には傍らにいるリヴァイの姿すら映っていないのかもしれない。
「俺はここにいる」
そう言って、兵士の手を固く握った。
その温もりは感じることができたのか、申し訳なさそうに目に涙を浮かべる。
「すい・・・ません・・・・・・役立たずで・・・・・・」
「なに言ってる、お前はこれからだろう」
「すいませ・・・ん・・・もっと・・・兵長の・・・役に立ちたかった・・・すけど・・・」
耳も聞こえていないのか、うわ言のように謝り続けている。
リヴァイは一度だけ目を固く閉じると、後ろでバケツを持ったまま立ちすくんでいるサクラに声をかけた。
「サクラ」
とても静かな声。
少しの感情も込められていないように聞こえる。
「はい」
「・・・大麻を持ってこい」
「・・・・・・・・・・・・」
大麻を使えば痛みがなくなるのと同時に昏睡状態となり、そのまま静かに息を引き取る。
兵長は苦しみより、安らぎを与えることに決めたんだ。
そう悟ったサクラは、涙を堪えて返事をした。
「・・・了解しました・・・」
ここまで痛みに耐えた兵士に敬礼をし、別のテントへと走る。
きっと戻るまでの僅かな時間で、リヴァイは兵士と最後の別れをするのだろう。
志半ばで逝く部下に、なんという言葉をかけるのだろうか。