【リヴァイ】Calmi Cuori Appassionati
第5章 Eye of the Silver Wolf
夜を迎え、空で星が瞬き始める頃。
調査兵団の野営地は騒然としていた。
「もっと薬をもってこい!」
「水、水だ!!」
屋根だけの簡易テントが点在し、その間を行き交う医師達が傷ついた者の治療に追われている。
中でも、巨人に下腹部を踏み潰されたリヴァイ班の兵士は瀕死の状態にあった。
下半身の骨が砕け、臓器は約7割が損傷。
もはや生きているのが不思議なくらいだという。
高熱と激痛に苦しみ、意識はほとんど無かった。
医師に頼まれた通り、水の入ったバケツを運んできたサクラは、オルオがテントのそばで頭を抱えながらうずくまっているのに気がついた。
「うぅ・・・うぅ・・・」
兵士が運び込まれてからというもの、ずっとこうしている。
こうなってしまったのは自分のせいだと、責め続けているのだろう。
そして、ペトラはそんなオルオの側に座り、表情を強張らせていた。
「死んだら俺のせいだ・・・俺が殺しちまったも同然だ・・・」
サクラはオルオにかけてやる言葉が見つからず、背中を軽くさすってからテントに入った。
そこでは今、一つの命が消えようとしている。
それもリヴァイ班に所属する、精鋭の命だ。
人類にとって大きな損失となるだろう。
リヴァイはずっと兵士の横に座り、治療の様子を見守っている。
すると、それまで延命治療を施していたベテランの医師が、沈痛な面持ちで首を横に振った。
「大麻を使おう」
その言葉にリヴァイが顔を上げ、眉をひそめる。
言いたいことが分かったのだろう、医師はもう一度首を振った。
「もうこの兵士は助からない。ならば、大麻で感覚を麻痺させてやることが救いとなるだろう」
「・・・・・・・・・・・・」
命を助けることができないならば、
痛みから解放し、安らかな死を迎えさせよう。