【リヴァイ】Calmi Cuori Appassionati
第22章 Let Your Heart Be Light
「買いかぶりだな。俺は忙しいエルヴィンの代わりに死んだ奴を確認しに行っているだけだ」
「でも、私は覚えていますよ」
少しだけボサボサになった黒髪を指で梳きながら、口元をほころばせる。
「102期生にとって初めての壁外調査の日・・・親友のフリーダが死んだ時のことを」
「フリーダ・・・?」
リヴァイは記憶の糸を手繰り寄せようとしたが、顔と名前が一致する者が思い浮かばなかった。
調査兵団に入団してから直属以外の上官に顔を覚えられるまで生きていられる新兵はそう多くない。
リヴァイが思い出せないのも仕方のないことだった。
「遠征途中の本部で、貴方は私に同期の腕章をくれました」
“・・・これは、兵士が命を賭して戦った証だ”
「あの時、私は思ったんです。貴方は兵士のことをよく見ている・・・だからこそ、兵士は皆、貴方に“託して”いくのだと」
フリーダはリヴァイを尊敬していた。
だからリヴァイの手で弔って欲しいと願い、彼女の腕章を手渡したサクラに、兵士長はこう言った。
“もし・・・“力”があるとしたら、それはこいつのような奴らが残した意志が、この俺に与えてくれたものだ”
「ああ・・・思い出した・・・お前、ヒーヒー泣いてたな」
「フリーダ、喜んでいたと思います。貴方の手で弔ってもらえて」
「・・・だといいがな」
リヴァイはサクラの手を引くと、その身体を抱きしめた。
真っ暗な部屋に一本だけ、明かりを灯すロウソクの火がユラリと揺れる。
「だが俺は、お前の意志を継ぐのだけはご免だ」
「兵長・・・」
「俺にお前の弔いだけはさせるな」
冷たくなったお前の身体を抱くことも、
返事のないお前に語り掛けることも、
「絶対にさせるな」
───死ぬんじゃねぇぞ、サクラ。