【リヴァイ】Calmi Cuori Appassionati
第22章 Let Your Heart Be Light
「兵長、おかえりなさい」
深夜1時。
リヴァイが部屋に戻ると、サクラは小さなテーブルで本を読んでいた。
「まだ起きてたのか・・・待っていなくていいと言ったはずだ」
「一度読み始めたら止まらなくて」
ロウソクの灯りだけで読んでいた本は、兵士達の間で流行っているという恋愛小説。
リヴァイは興味もないが、このような非現実的な話が人気なのは、現実から目を逸らしたいという願望の現れだろうか。
黙ってシャツを脱いでいると突然、柔らかいタオルが頭を包み込んだ。
「髪・・・濡れたままですよ」
「・・・・・・・・・・・・」
「また身体を洗っていたんですね」
悲しそうに瞳を揺らしながら、リヴァイの髪を拭いてやる。
こうして触れてみると、人類最強と呼ばれる男の頭がいかに小さく、その髪は子どものように柔らかなことを知る。
小柄な人なのだ。
この人の背中に、人類は希望という重圧を背負わせる。
「匂いが・・・取れなかった」
何度も、何度も、全身と髪を洗った。
それでも染みついて取れない死臭。
まるで死んでいった者が遺した、強い想いがそうさせているかのよう。
「兵長が何故強いのか、分かるような気がします」
「・・・あ?」
「貴方は兵士がどのような形で死のうと、彼らの最期の姿から目を逸らさない。誰も近寄りたがらない死体置き場に、壁外調査が終わると必ず足を運んで・・・」
一人一人の想いを背負おうとする。
そんな人だからこそ、死者の魂は貴方に力を与える。
“リヴァイ兵長のお役に立てるのであれば・・・”
“この心臓を捧げます”
たくさんの想いと力を託されるから、貴方は強いのでしょう。
私にできるのは、そんな貴方の身体がいつか壊れてしまわないようにと願うことだけ。