【リヴァイ】Calmi Cuori Appassionati
第22章 Let Your Heart Be Light
調査兵団というものは、頭のおかしい死にたがり人間の集まり。
世間の認識なんてそんなもので、壁外へ出陣していく自分達に向けられる目は冷ややかだ。
中には好意的な目を向ける者もいるが、それは巨人を恐れない勇敢な人間の集まりという盲信にすぎなく、“平和”な奴らの偶像崇拝にほかならない。
「リヴァイ兵長、こちらです」
世間は知っているのだろうか。
「今回の壁外遠征の死者・行方不明者は34名、そのうち遺体を回収できたのは12名です」
誰だって死と直面するのは怖い。
それが自分の死であろうと、他人の死であろうと。
「損傷が激しい者については、遺族に回収不可能だったと伝えてあります」
壁外遠征からの帰還後、一部屋に集められた死体の束。
この惨状を見て平常心でいられる者は、調査兵団の中にだって多くない。
死体処理を担当していた兵士は、嘔吐しそうになるのを堪えながら、血と肉の塊となり果てた仲間達に目を向けた。
「壁外に置いてきた奴のリストは?」
「こちらに。団長にも提出してあります」
「そうか・・・ごくろうだった、あとは俺が引き受ける」
兵士はリヴァイに向かって敬礼すると、口を手で押さえながら出て行った。
リヴァイの目の前には、12名の遺体。
そのうち8割以上の肉体が残っているのは、わずか5名だった。
下半身が無いのはまだいい方。
腕だけとなった者、顔半分を失った者、さまざまだ。
“リヴァイ兵長、俺は死ぬのが怖い。だけど、貴方の隣で戦いたいから一緒に行かせてください”
“貴方に憧れて調査兵団に入りました”
そこに転がっているのは肉の塊ではない。
自由に憧れ、人類の未来のために心臓を捧げた兵士達。
「よくやった・・・お前らを誇りに思う」
死人に言葉をかけたところで、それは届くはずもない。
それでも冷たい三白眼をした兵士長は、一人一人の傍らに跪き、彼らの遺志を無駄にはしないと誓いを捧げていった。