【リヴァイ】Calmi Cuori Appassionati
第21章 感謝のShort Story
「なあ、エレン・・・お前にラベンダーを教えた大切な奴っていうのは・・・」
「あの・・・」
どうしてそのような事を聞いてきたのか、少し意外だった。
しかし、隠すようなことでもない。
「サクラ・ブルームです」
もし、エレンが真っ直ぐとリヴァイの顔を見ながら答えていたら、気づけたかもしれない。
その名前を聞いた瞬間、明らかに彼の表情が変わったことを。
しかし、エレンはリヴァイを前に萎縮するあまり、目を伏せたままだった。
「2年前に調査兵団に入団しているんですが・・・リヴァイ兵長はご存知ですか?」
「・・・あ・・・ああ・・・知ってる」
それは、リヴァイがラベンダーを知っていた事と同じくらい嬉しい言葉だった。
調査兵を目指す者にとって、リヴァイの存在は大きい。
憧れや尊敬を超え、崇拝している者すらいる。
その兵士長が、サクラの存在を認識しているという事が嬉しかった。
「サクラはオレと同じシガンシナ区出身で、知り合ったのは5年前ですが、とても親しくしてもらいました。すごく優しくて・・・」
テーブルの上に敷き詰められたラベンダーを見ていると思い出す。
激昂しやすい性格だった自分をいつも癒し、慰めてくれた。
「調査兵団に入ってからも、何度かオレ達の駐屯所に遊びに来てくれて・・・つい、2カ月前もオレが訓練兵を卒業するっていうので、会いに来てくれたんです」
しかし、エレンはその時に起こった事を思い出し、表情を曇らせた。
あれは第55回壁外調査の直前だった。
自分はサクラに・・・
「でも、オレ・・・アイツに謝らなきゃならないんです」
「謝る?」
エレンはラベンダーの花へ視線を落とすと、肩を震わせた。
エレンの脳裏に蘇る、サクラとの最後の思い出。
切り立った崖の下に広がる、澄んだ湖。
幾千の星が瞬く夜空。
誰もいない静かな世界で、エレンは衝動に駆られるようにしてサクラに口づけた。