【リヴァイ】Calmi Cuori Appassionati
第21章 感謝のShort Story
旧本部に戻ると、エレンはまっすぐと調理場に向かった。
そして、隣接している食堂のテーブルに摘んできたラベンダーを広げる。
「えっと、確か・・・」
前にサクラからドライフラワーの作り方を教えてもらったことがある。
細かいことは覚えていないが、とりあえず適当な束にして、そこらへんに吊るしておけばいいのだろう。
鼻歌混じりに作業していると、ふと人の気配を感じて顔を上げた。
そして、戸口にいた人物の顔を見た瞬間、反射的に緊張が走る。
「あ、リヴァイ兵長」
慌てて敬礼をすると、床にラベンダーの花弁が数枚舞い落ちた。
「・・・・・・・・・」
リヴァイはエレンの敬礼を無視し、テーブルに敷き詰められた花を見ている。
普段はほとんど表情を変えない男だが、明らかに不快そうに顔をしかめていた。
「エレン、お前・・・それ・・・」
「ラベンダーです、兵長」
気を悪くさせてしまったかもしれない。
食事をするテーブルの上に、彼からすれば“雑草”を広げているのだから・・・
「それは知ってる。何故そんなものがここにあるんだ」
「え?」
・・・知ってる?
ラベンダーの花をこの人は知っているのか?
エレンは驚いた。
ラベンダーはウォール・ローゼに群生する植物だが、一般的ではない。
自分だってサクラから教えてもらわなければ、ただの“青い花”としか認識していなかっただろう。
サクラが好きだった花を、リヴァイも知っている。
彼女の息遣いを感じたような気がし、嬉しくなったエレンはその一本を兵士長に差し出した。