【リヴァイ】Calmi Cuori Appassionati
第21章 感謝のShort Story
ラベンダー。
これほど特徴的な香りの花を、他に知らない。
木々の合間から、“私はここだよ”と訴えるかようにその香りを漂わせている。
エレンは誘われるがまま、森を歩いていた。
『 兵士は仲間との連携が大事なんだよ、なのに貴方が友達と仲良くできないと心配 』
真っ直ぐすぎる性格からか、ジャンや同期達と衝突することも少なくなかった。
サクラはそんな孤立しがちなエレンを、いつも心配していた。
『 ・・・サクラが心配するなら、もうケンカはしない 』
彼女の悲しそうな顔を見たくなくて、つい口先だけの約束をしてしまう。
『 その言葉、もう何度も聞いたよ? 』
ふわりと笑う、サクラの笑顔。
怒りも、悲しみも、全て落ち着かせてくれる。
そう、この香りを嗅いだ時のように・・・
思い出すだけでこんなに温かい気持ちになるのに、どうして胸は苦しくなるのだろう。
「うお!」
木々の切れ目に視界が開けた途端、エレンの両足が止まった。
そこにあるのは小さな泉。
それを取り囲むようにして、ラベンダーが群生している。
決して多くはないが、差し込む木漏れ日に朝露を含んだ小さな花びらがキラキラと輝いていた。
その光景はとても穏やかで、美しく。
「ラベンダーの美しい青・・・」
脳裏に蘇る懐かしいメロディーが、自然とエレンの口から零れていた。