【リヴァイ】Calmi Cuori Appassionati
第21章 感謝のShort Story
リヴァイもそれを知ってか、エレンから目を離そうとしない。
もちろん監視の意味もあるが、いつ暴走しても構わないよう警戒しているのだろう。
必要あらば、この憐れな新兵のうなじを削ぐことも躊躇しない。
彼はそういう人間だ。
エレンはリヴァイのことを心から尊敬している。
だが、だからといって信頼しているわけではない。
彼のことを何一つ知らない。
ここへ来た初日にペトラから“地下街でゴロツキをやっていた”と聞いたくらいだ。
いったい何を思い、何の理由で巨人と戦っているのか分からない。
そもそも、彼の心臓を捧げる敬礼を見たことがないが、人類を守ろうという意志はあるのだろうか。
エレンは舌に残る自身の血の味にウンザリしながら、もう一度小さく呟いた。
「サクラ・・・会いたい」
サクラに会えたら、きっと心から笑えるような気がする。
昔、よく歌ってくれたラベンダーの子守唄が聞きたい。
最近、あまり眠れないんだ。
あの優しい声で歌ってくれたらきっと・・・
寂しさと恋しさから、エレンの目が軽く潤んだ時だった。
西から吹いてくる風に乗ってきた香りが、鼻をくすぐる。
とても甘く、そして優しい。
「ラベンダー・・・?」
自分がこの花を歌った子守唄を聞きたいと呟いたからだろうか。
それとも、サクラに会いたいと強く願ったからだろうか。
どこからともなく懐かしい香りが漂ってくる。
草むしりをする手を止め、エレンの足は自然とその方へと向かっていた。