【リヴァイ】Calmi Cuori Appassionati
第21章 感謝のShort Story
「いいから黙って、全部オレに投資しろ!!」
エレンの叫び声が響き、審議所は一瞬にして凍り付いた。
無鉄砲さと未熟さからくる発言で、その場にいた“大半”を敵に回す。
次の瞬間、頰に激痛が走った。
勢いよく飛んでいく白い物体が自分の歯だと脳が認識した時には、顔面に膝がめり込んでいた。
真っ赤な血が、辺り一面に飛び散る。
腹を蹴り上げられ、悲鳴をあげることも許してもらえない。
無慈悲な暴力。
頭を踏みつけるその足には、一切の躊躇いが無かった。
「これは持論だが、躾に一番効くのは痛みだと思う」
冷徹なその声の主は、数日前にエレンに調査兵団への入団許可を下した男。
「今お前に一番必要なのは、言葉による“教育”ではなく、“教訓”だ」
この世の痛みの全てを知るような抑揚のない声に、エレンの中にある強い怒りは、畏れに変わっていった。
もちろん政府の腰抜けどもへの怒りは消えていない。
しかし、兵士長がなぜ自分に“教訓”を叩き込もうとしているのか。
ここにいる“大半”の人間は自分を殺そうとしている。
でもこの人は・・・
「待て、リヴァイ」
「何だ・・・」
「・・・危険だ。恨みを買ってこいつが巨人化したらどうする」
エレンに対する恐怖心を隠そうともしない憲兵団師団長。
対象的に、恐怖心を微塵も感じさせない調査兵団兵士長。
彼の次の言葉を聞いた瞬間、漠然としていた予感が確信へと変わる。
「お前らはこいつを解剖するんだろ?」
エレンの髪を掴んで引っ張り上げるこの人物は、慈悲の欠片もないはずなのに・・・
お前らにはこいつを渡さない。
こいつの命は、俺が預かる。
不思議と、優しさを感じた。