【リヴァイ】Calmi Cuori Appassionati
第21章 感謝のShort Story
何故、自分は巨人化することができるのか。
トロスト区襲撃の後、地下牢に幽閉されながらずっと考えていた。
自分の身に起こった変化。
それを自然と受け入れている事実。
まるで、巨人に変身できることはずっと前から知っていて、ただそれを忘れていただけ。そんな錯覚さえ覚える。
「エレン・イェーガー、食事の時間だ」
「あ・・・ありがとうございます」
「・・・!!」
牢番の目には恐怖の色が浮かび、食事を受け取る際に軽く指先が触れただけなのに飛び上がるようにして逃げていく。
そんなにオレが怖いのか。
野菜の切れ端しか浮いていないスープに、硬いパン。
これは“朝食”なのだろうか、それとも“昼食”なのだろうか。
いずれにせよ、腹はまったく空いてない。
「・・・・・・・」
太陽の光が届かない地下。
誰も時間を教えてくれないから、日付はおろか、昼なのか夜なのかも分からない。
エレンはノロノロとスープを口元に運んだ。
味覚が麻痺しているのか、美味しいとも、不味いとも思えない。
唯一、巨人化した自分を見ても恐れずに接してくれた、アルミンとミカサはどうしているだろう。
ジャン・・・ライナー・・・ベルトルト・・・マルコ・・・アニ・・・コニー・・・サシャ・・・クリスタ・・・
みんな、無事だろうか。
一人、不安と孤独に耐えるしかない。
しかし、彼の中にある感情はそれだけでなかった。
『 認めてやるよ・・・お前の調査兵団入団を 』
エレンは今、高揚感を覚えていた。
「リヴァイ兵士長・・・」
想像していた姿より、かなり小柄な英雄。
トロスト区の前門にあいた穴を塞ぎ、遠のく意識の中で視界に飛び込んできた、彼の姿を思い出す。
まるで天から舞い降りた鷲のようだった。
自由の翼をはためかせ、圧倒的な強さを漂わせていた。
『 オイ・・・ガキ共・・・これは・・・どういう状況だ? 』
振り返ったその瞳に、高鳴った心臓。
安心・・・?
いや、違う。
アルミンやミカサが聞いたら変な顔をするかもしれないが・・・
“ もう大丈夫よ、エレン ”
あの時・・・サクラの声が聞こえたような気がした。
なぜかは分からない。
はためく“自由の翼”に、懐かしさを覚えた。